予定より30分近く早い時間に、
退院を許された。
退院前に、術後の注意事項を書いた紙を渡され、
薬をもらった。
今日、明日はシャワーも禁止。
明日は、出歩かず、安静にすること。
3週間くらいは、セックスもお酒も、
運動、お風呂、辛いもの、すべて禁止。
激しい痛みや多量の出血があるときは、必ず来院すること。
そんな説明を受けた。
「今度の土曜日に、再診に来てください。
そのときに、次の生理がいつごろになるかとか、
詳しく説明するから」
病院を出るまえに、おむつみたいなナプキンから、
自分の持ってきた下着にはき替えた。
おむつみたいな物の中に、
更に自分が持ってきたナプキンがつけられていた。
ナプキンは、隅から隅まで、血を吸って真っ赤になっていた。
それが、あかちゃんの残骸みたいに思えて、あたしはゾッとした。
目を凝らして探せば、
あかちゃんのかけらが混じっているのではないかと思えた。
胸がずき、として、
自分がすごく残酷なことをしてしまったんだという自覚が、
改めて湧いた。
回復室から病院をでるまでに、待合室がある。
そこにいる誰かが責めるわけでもないのに、
あたしは顔を見られないよう、うつむいて病院を出た。
想像していたより、身体はずっと楽だった。
手術をする前より、楽になったような気がした。
だけど、それが逆に申し訳なくて、後ろめたかった。
あかちゃんを殺してしまったのに、あたしだけ、楽になるなんて。
もっともっと、痛くて良いのに。
苦しくて良いのに。
病院から出ると、Kさんの車が見えた。
Kさんが、走って出てきて、あたしを支えてくれた。
「だいじょうぶ?」Kさんがきいた。
「うん・・・・・・」
あたしは急に力が抜けてしまって、車のシートにもたれかかった。
「夜から、何も飲んでないんでしょ」
飲み物を買ってくれたが、あたしは何も飲む気にはなれなかった。
ひとくちだけ飲んで、目を閉じた。
ひとりでたくさん泣いたから、涙はでなかった。
身体は軽い。
だけど、「健康になった」という感じは消えていて、
中が空洞になってしまっているみたいに思えた。
あたしは、ぽかんとしていた。
空虚、とか、そんな言葉が浮かんだ。
帰りの車中。
Kさんが、行くときにしたみたいに、下腹部に手をおいた。
「もう、何もいないよ」
あたしは言った。
退院を許された。
退院前に、術後の注意事項を書いた紙を渡され、
薬をもらった。
今日、明日はシャワーも禁止。
明日は、出歩かず、安静にすること。
3週間くらいは、セックスもお酒も、
運動、お風呂、辛いもの、すべて禁止。
激しい痛みや多量の出血があるときは、必ず来院すること。
そんな説明を受けた。
「今度の土曜日に、再診に来てください。
そのときに、次の生理がいつごろになるかとか、
詳しく説明するから」
病院を出るまえに、おむつみたいなナプキンから、
自分の持ってきた下着にはき替えた。
おむつみたいな物の中に、
更に自分が持ってきたナプキンがつけられていた。
ナプキンは、隅から隅まで、血を吸って真っ赤になっていた。
それが、あかちゃんの残骸みたいに思えて、あたしはゾッとした。
目を凝らして探せば、
あかちゃんのかけらが混じっているのではないかと思えた。
胸がずき、として、
自分がすごく残酷なことをしてしまったんだという自覚が、
改めて湧いた。
回復室から病院をでるまでに、待合室がある。
そこにいる誰かが責めるわけでもないのに、
あたしは顔を見られないよう、うつむいて病院を出た。
想像していたより、身体はずっと楽だった。
手術をする前より、楽になったような気がした。
だけど、それが逆に申し訳なくて、後ろめたかった。
あかちゃんを殺してしまったのに、あたしだけ、楽になるなんて。
もっともっと、痛くて良いのに。
苦しくて良いのに。
病院から出ると、Kさんの車が見えた。
Kさんが、走って出てきて、あたしを支えてくれた。
「だいじょうぶ?」Kさんがきいた。
「うん・・・・・・」
あたしは急に力が抜けてしまって、車のシートにもたれかかった。
「夜から、何も飲んでないんでしょ」
飲み物を買ってくれたが、あたしは何も飲む気にはなれなかった。
ひとくちだけ飲んで、目を閉じた。
ひとりでたくさん泣いたから、涙はでなかった。
身体は軽い。
だけど、「健康になった」という感じは消えていて、
中が空洞になってしまっているみたいに思えた。
あたしは、ぽかんとしていた。
空虚、とか、そんな言葉が浮かんだ。
帰りの車中。
Kさんが、行くときにしたみたいに、下腹部に手をおいた。
「もう、何もいないよ」
あたしは言った。
コメント