手術の日の朝、Kさんは約束の時間ぴったりにやってきた。

同意書にはんこを押してもらい、すぐに家を出たから、
病院には、30分以上早く着いてしまった。
 
駐車場に車を停め、時間を潰した。

あたしは緊張してた。
これから何が起こるのかわからず、こわかった。

お腹に手をあてていたら、Kさんがあたしの手の上に手を重ねた。

お腹のあかちゃんは、うんともすんともいわない。
ラミナリアのせいで、生理痛みたいな痛みはあったけれど、
いつものように、あたしの不安とか、どきどきに合わせた、
ズキズキが、その日はなかったように思う。
 
 
Kさんと手をつなぎ、時間が過ぎるのを待った。
 
会話なんてなかった。
ただ、じっと押し黙ってた。
 
 
手術は10時から。
 
「少し、早めに行った方が良いのかな」
あたしは言った。
「そうだね。最初に説明もあるだろうから」
Kさんが言った。

「じゃあ、そろそろ行ってきます」
「うん」
 
 
あたしは、車の中で、Kさんにぎゅうと抱きついた。

「こわい」
我慢しきれなくて、言葉が漏れた。

Kさんは、ぎゅ、とあたしを抱き返してくれた。

「オムニアがでてくるまで、ずっとここにいるから。
 なにかあったら、すぐ連絡しておいで」
「ん……」

病院内まで、一緒についてきて欲しかったけれど、
病院側から、付き添いはできないと言われていた。

あたしは同意書と、手術費用、ナプキンがあるのを確かめて、
病院へ行った。
 
 
 
病院に入り、受付で同意書と手術費用を渡した。
 
待合室には、もう何人か患者さんがいたけれど、
あたしは順番どおりでなく、すぐに名前を呼ばれた。
 
 
 
通されたのは診察室ではなく、「回復室」という部屋だった。
ベッドと小さな棚、洗面台があるだけの、小さな個室だった。

担当の看護師さんから手術の説明があり、いくつかの問診を受けた。
そして、持ってきたナプキンを預けた。

「では、準備ができたら呼びに来ますね。
 それまでに、上下の下着やコンタクトははずしておいてください。
 肩と腕に注射をしますので、
 出しやすい格好になっておいてください」

手術着みたいなものはないらしかった。
あたしは言われたとおり、コンタクトと下着をはずして、待った。

時計をみた。
10時15分くらいだった。
あと3時間弱で、何もかも終わってるんだな、と思った。

下腹部に手をあてた。
お腹のなかから押されるような張り。
これがなくなったら、どんな感じなんだろう。
そう思った。
 
 
処置室に呼ばれるまで、あたしはずっとお腹をさすってた。
 
 
緊張と、不安。

Kさんがここにいてくれたら良いのに。
何度目かわからないが、また、そう思った。
病院からの帰りにしてくれたみたいに、お腹に手をあててほしかった。
手のぬくもりが恋しかった。
 
 
こわかった。

ただ、こわかった。

コメント

piero
piero
2007年2月18日11:06

物凄く
読んでる方も緊張し重く受け止めています

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