「愛しい」という気持ち
2007年1月30日 恋愛 コメント (3)
Kさんと初めて出会ったのは、
去年の春だ。
春。
あたしは仕事を辞め、
派遣社員になった。
派遣社員として、
初めて派遣された会社の社員のひとり、
それがKさんだった。
はじめ、Kさんとは席が離れていたし、
仕事のかかわりもほとんどなかった。
だから、あたしは彼の名前すら覚えていなかった。
名前を覚えたのは、初めて食事に誘われたあとだ。
派遣されて2週間くらい経ったころだった。
たぶん、まともに言葉を交わしたのも、その時が初めてだったと思う。
当時、あたしには彼氏がいたし、
16歳も年の離れたひとを『恋愛対象』として意識していなかった。
だから、ついて行かなかったし、
その後も、とくに喋ったりすることもなく、働いてた。
ただ、恋愛感情とはまったく違うけれど、
「この人は、どういう人なんだろう」
そう思うようになった。
もともと派手な業界だったから、
誘ってきたのはKさんだけじゃなかったけれど、
今思えば、少しでも気にしたのは、Kさんくらいだったと思う。
理由は思いつかない。
そのあと、また誘われた。
食事にいくのが嫌だというわけではなかったけれど、
あたしはいつも冗談として笑って流してきた。
食事に行ったのは、彼氏と別れたすぐあとだ。
雨の日の朝、珍しくKさんと会社の前で会った。
少し前にいたKさんは、歩みを遅め、あたしの隣にきた。
「食事に行くのは、難しそう?」
あたしは、咄嗟に「そんなことないですけど・・・・・・」と答えていた。
食事に行った日のことは、今でもよく覚えている。
お酒をたくさん飲んで、したたかに酔ってはいたけれど、
言葉のひとつひとつや、場面の一片一片も、思い出すことができる。
Kさんを受け入れたのは、あたしがかるい女だったからだ。
あのとき、Kさんの携帯がなってた。
「電話、でないくていいの?」
「いいよ。おうちの人だから」
Kさんはそういって、あたしにキスした。
あたしは、たぶん抵抗しなかったと思う。
始めのうち、あたしは恋愛対象として
Kさんのことが好きだったわけじゃないと思う。
あたしよりずっと大人な男性に『エスコート』されるデートが
楽しかっただけだと思う。
Kさんを受け入れるのは、そのデートの代価だった。
でも、いつの間にか、一緒にいるのが心地よくなってた。
抱きしめられれば、それだけで嬉しいと思うようになってた。
冷静な頭で「はまらないように」と思っている一方、
「愛されたい」と思う自分がいた。
だから、あたしは、本当は喜びたかったんだと思う。
赤ちゃんができたことを喜び、Kさんにも喜んでほしかったんだと思う。
お腹のあかちゃんも、あたしのことも、
「愛しい」と思ってほしかったんだと思う。
そして、もしそれができないのであれば、
何の期待も持てないくらいに、厳しく固く拒絶してほしかったんだと思う。
だけど、Kさんの反応は違った。
「嬉しい」なんて、そんな建前みたいな言葉は要らなかった。
産めないのなら、「おろせ」という冷たい言葉だけでよかった。
そうすれば、諦めがついたかもしれないのに。
おなかのあかちゃんを、「愛しい」と思ったりしなかったのに。
期待なんかしなかったのに。
去年の春だ。
春。
あたしは仕事を辞め、
派遣社員になった。
派遣社員として、
初めて派遣された会社の社員のひとり、
それがKさんだった。
はじめ、Kさんとは席が離れていたし、
仕事のかかわりもほとんどなかった。
だから、あたしは彼の名前すら覚えていなかった。
名前を覚えたのは、初めて食事に誘われたあとだ。
派遣されて2週間くらい経ったころだった。
たぶん、まともに言葉を交わしたのも、その時が初めてだったと思う。
当時、あたしには彼氏がいたし、
16歳も年の離れたひとを『恋愛対象』として意識していなかった。
だから、ついて行かなかったし、
その後も、とくに喋ったりすることもなく、働いてた。
ただ、恋愛感情とはまったく違うけれど、
「この人は、どういう人なんだろう」
そう思うようになった。
もともと派手な業界だったから、
誘ってきたのはKさんだけじゃなかったけれど、
今思えば、少しでも気にしたのは、Kさんくらいだったと思う。
理由は思いつかない。
そのあと、また誘われた。
食事にいくのが嫌だというわけではなかったけれど、
あたしはいつも冗談として笑って流してきた。
食事に行ったのは、彼氏と別れたすぐあとだ。
雨の日の朝、珍しくKさんと会社の前で会った。
少し前にいたKさんは、歩みを遅め、あたしの隣にきた。
「食事に行くのは、難しそう?」
あたしは、咄嗟に「そんなことないですけど・・・・・・」と答えていた。
食事に行った日のことは、今でもよく覚えている。
お酒をたくさん飲んで、したたかに酔ってはいたけれど、
言葉のひとつひとつや、場面の一片一片も、思い出すことができる。
Kさんを受け入れたのは、あたしがかるい女だったからだ。
あのとき、Kさんの携帯がなってた。
「電話、でないくていいの?」
「いいよ。おうちの人だから」
Kさんはそういって、あたしにキスした。
あたしは、たぶん抵抗しなかったと思う。
始めのうち、あたしは恋愛対象として
Kさんのことが好きだったわけじゃないと思う。
あたしよりずっと大人な男性に『エスコート』されるデートが
楽しかっただけだと思う。
Kさんを受け入れるのは、そのデートの代価だった。
でも、いつの間にか、一緒にいるのが心地よくなってた。
抱きしめられれば、それだけで嬉しいと思うようになってた。
冷静な頭で「はまらないように」と思っている一方、
「愛されたい」と思う自分がいた。
だから、あたしは、本当は喜びたかったんだと思う。
赤ちゃんができたことを喜び、Kさんにも喜んでほしかったんだと思う。
お腹のあかちゃんも、あたしのことも、
「愛しい」と思ってほしかったんだと思う。
そして、もしそれができないのであれば、
何の期待も持てないくらいに、厳しく固く拒絶してほしかったんだと思う。
だけど、Kさんの反応は違った。
「嬉しい」なんて、そんな建前みたいな言葉は要らなかった。
産めないのなら、「おろせ」という冷たい言葉だけでよかった。
そうすれば、諦めがついたかもしれないのに。
おなかのあかちゃんを、「愛しい」と思ったりしなかったのに。
期待なんかしなかったのに。
コメント
でも・・・私も同じ思いをした一人です。
聞かせてください・・・。
本当に、彼の子供を産みたくないのでしょうか?
その彼の事を愛していないのでしょうか・・・?
子供を育てる事は簡単な事ではないと思います。ですが、産むつもりもない赤ちゃんに、『愛しい』と思うでしょうか。
よく考えてください・・・。
子供は簡単には育てられません。でも・・・それよりもなによりもあなた自身の気持ちを、本当の気持ちを大切にして下さい。
気になってまたお邪魔してしまいました。
心が痛く、チクチクします。
現実の世界で誰にも言えない事、少しは吐き出して楽になってください。ほんの少しでも。
あなたも、同じ経験をされているのですね。
正直言って、あたしは未だに自分がどうしたかったのか、
本当の気持ちがわかりません。
産みたかったのか、産みたくなかったのか。
答えられません。
ただ、お腹にいたあかちゃんのことを『愛しい』と思っていたのは本当です。
彼とあたしの関係では、子供を持つことはできない、と
そう現実をみて思っていました。
でも、思考とは別に、気持ちは「お母さん」になっていたんです。
だから、あかちゃんがいるのが、嬉しくて、愛しかったんです。
**こはるさん**
ありがとうございます。
ここでは、ひとつの出来事を整理し、つづるだけではなく、
自分の気持ちを思うままに残そうと思います。